求人を出しても来ない、来ても続かない

求人サイトに出しても、応募が来ない。採っても、半年で辞める。募集と教育に追われて、肝心の現場が回らない。小さなサロンほど、この人の問題が経営を直撃します。

美容の現場では、長時間労働や将来の不安から、雇われずに働く道を選ぶ人が増えています。採用の難しさは、自店の努力不足というより、働き方そのものが変わっている流れの中にあります。だからこそ、採用の数を追う前に、店の設計から考え直す価値があります。

採用の前に、まず定着

応募が来ないとき、つい募集の出し方を変えたくなります。ただ、辞める人が多い店は、入口をいくら広げても追いつきません。先に手をつけるのは、今いる人が辞めない状態です。

辞める理由は、多くが4つに集まります。労働時間が長い、給与の決め方が見えない、育成が個人任せ、将来の姿が描けない。ここを1つずつ直すと、定着が上がります。そして、辞めない店という評判が、次の応募を呼びます。定着は、採用の前提です。

なぜ「雇わない設計」が増えているのか

定着と並んで、もう一つの選択肢が広がっています。雇わずに回す設計です。一人サロン、業務委託、シェアサロンの面貸し。少人数のまま、固定費を抑えて利益率を上げる店が増えています。

背景には、SNSで美容師が自分で集客できるようになったことがあります。指名のお客さまを自分で持てるなら、雇われずに、場所を借りて働くほうが手取りが増える。店の側も、固定の人件費を抱えずに席を活かせます。雇用が当たり前だった時代から、働き方の選択肢が分かれてきました。

雇う・雇わないの分かれ道

どちらが正しいということはありません。店として何を目指すかで、向き不向きが分かれます。

観点雇用(スタッフ)業務委託・面貸し
集客店が集めて配分する本人が集める(面貸し)/店が回す(業務委託)
売上と報酬店の売上、給与で支払う本人の売上に対する報酬、または席の利用料
コスト固定費(給与・社会保険)変動費に近い
育成・定着育成が要る、辞めるリスクを抱える本人次第、店との関係は対等
向く店規模を広げ、チームで育てたい少人数で利益率を上げたい

業務委託と面貸しは、契約の形も税務の扱いも違います。導入の際は、社会保険労務士や税理士に確認してください。

どちらを選んでも、顧客は店の資産

雇用でも、業務委託でも、面貸しでも、共通して守ることが一つあります。顧客の記録を、個人任せにしないことです。担当者の頭の中とスマートフォンだけに顧客がいると、その人が抜けたとき、顧客ごといなくなります。

来店履歴、カルテ、次回の提案、回数券の残り。これらを店の顧客台帳に残しておけば、担当が変わっても、別のスタッフが続きから対応できます。人は入れ替わっても、顧客の記録は店に残す。これが、人の問題に経営を揺さぶられないための土台です。

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顧客の記録の残し方は「サロンのカルテを紙からやめる」、再来店の作り方は「新規をリピートに変える顧客台帳」で扱っています。雇い方を変えても、顧客が店に残る形にしておくことが先です。

自店の段取り ― 辞めた理由を書き出す

人の設計を変える前に、今の状態を1度だけ見ます。最初の一歩は、直近で辞めた人がなぜ辞めたかを、書き出すことです。

  1. 辞めた理由を出す:直近で辞めた人を思い出し、労働時間・給与・育成・将来の4つで、原因がどこにあったかを書く。
  2. 定着を1つ直す:4つのうち、いちばん効きそうな1つから手をつける。全部を一度に変えない。
  3. 雇う・雇わないを考える:規模を広げたいのか、少人数で利益を残したいのか。店の目指す形から、雇い方を選ぶ。
  4. 顧客を店に残す:来店履歴・カルテ・次回提案を、担当個人でなく店の台帳に残す運用にする。
今月の確認
  • 直近で辞めた人の理由を、4つの観点で書き出したか
  • 定着のために、まず直す1つを決めたか
  • 店として、規模を広げたいか、少人数で利益を残したいかを言葉にしたか
  • 顧客の記録が、担当個人でなく店に残る状態か

人が採れない時代に、無理に頭数をそろえる必要はありません。今いる人が辞めない店にする。あるいは、雇わない設計で少人数のまま利益を残す。どちらを選んでも、顧客の記録さえ店に残しておけば、人の入れ替わりに強い店をつくれます。